2017年2月21日火曜日

発表会(下)

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2016年12月11日、日曜日午前。自身37年ぶりの発表会。
 ショパン・ノクターンOP.2。3年前に独習でピアノ再開のきっかけになった曲が発表会の作品となりました。
 早起きして、最後の調整。先生のアドバイスを噛みしめるよう10回通しで弾いてみました。最初は5、6回のミスタッチが最後は2ミスほどになりました。わずかひと月で仕上げたのでこれぐらいは仕方がないだろう。楽観的な気分で家を発ちました。
 会場は横浜市の施設で、400席近くもあるホールです。お客さんはさすがにそこまで埋まりませんが。自分の教室は開かれてまだ3年と新しい教室で、発表会は今回で2回目ということです。出演する生徒は15人。連弾の部では両親も参加できます。それにしても今はピアノを習う男の子が多いのですね。かつては自分が出演した発表会は参加者は倍ほどいましたが男子は2、3人でした。今回は自分を含めて15人中6人もいます。
 まだ小学校に入る前の小さな小さな子どもたちからスタートです。にこにこお辞儀をきっちりして、緊張している様子はなくてうらやましいですね。自分も気ぜわしく感じられるようになってきました。私の教室は若い教室なので、生徒も本当に若いです。3分の2は小学生以下。自分の教室を褒めるのもなんですが、子どもたちのうまいこと。どう伝えたら良いのでしょう。ペダルに足が届かないちびっ子ばかりと思っていたら、一本調子の子は一人もいません。緩急をつけ、感情表現も巧み。手首の使い方がしなやかな子もいっぱいいました。4、5年たったらこの半分以上の子どもたちに、間違いなく実力で抜かされるだろう。
 自分の順番は15人中14番目。最終演者は私より若干お若い大人の女性で、おとなは自分を含めて2人だけです。昨年は大人は一人だけだったようで、私の参加で安心されたようです。さて自分の番が迫ってきました。5人前で舞台裏の待機所へ。舞台袖のお客さんから見えないところで次の子どもに先生が最期のアドバイスをしています。いよいよ中学生の演奏になりました。さすがに中学生ぐらいになるとみんな緊張した様子。自分はといえば、なぜか思っていたほど緊張していない。今回は暗譜演奏ではないので、楽譜というお守りが心強い。そしていよいよ自分の番に。
  舞台裏で雑務を担っていたやや年配の女性から「譜面台はつけられます?」。先生とそっくりの雰囲気!きっとお母さんに違いない。それにマイク進行の女性も似ているような気がする。きっとお姉さんか妹さんだ。これは現在に至っても確認していなかったりするので今度聞いてみよう。「付け方はわからないんです」(私)。「ではつけてくるのでここ(舞台袖)で待っていてください」(きっと先生の母)。グランドピアノの譜面台って取り外しできるんですね。子どもたちはもちろん暗譜なので取り外されていました。
  そして演奏曲が収められた全音のショパンピアノアルバム(ピースは買わなかったんです)を手に舞台へ。椅子の後方の床にテープで印が貼ってあります。ここがお辞儀する場所だな。 舞台に向けられた光線が眩しい。遠近感というか大小の見え方の錯覚で、普段あれ程大きく感じられるグランドピアノが広い舞台にぽつんと置かれているとものすごく小さく感じられます。一礼してあこがれのスタインウェイへ。C-227というモデルのようです。価格を調べたらなんと1500万円!椅子からして全然違います。家のピアノ椅子と全く違う座り心地。クッションはうちの2倍はあるだろうかフカフカです。付箋をつけていたノクターンのページを開き、ペダルの位置を確認し深く深呼吸していよいよ演奏へ。
 先生に教わったように弱く押し込むように第一音のシ♭を人差し指で打鍵すると「おや?」です。ざらつきというか、指に吸い付くような感触。普段自分の弾いているピアノの鍵盤はつるつるしているがざらざらして感触が全く違います。そしてタッチがものすごく軽い。
 普段と全く違う環境だからか、弾き初めて数小節目でいきなりミスタッチ。こんなところで間違ったことがありません。靴を履いてペダルを踏むのに慣れないため感覚がよくわからず、つま先を引っかけたりしてペダリングが狂うのも余計な気を反らせる原因に。心はそれほど緊張していないのに体がどんどんガチガチになってくるのがわかります。そういえばいつの間にか足が震えている。手も小刻みに震えているのが感じられます。私はかなり鈍感な人間で、この日も直前まで緊張感を感じられなかったのですが、演奏中に体が完全に緊張状態に陥ってしまいました。金縛りの経験ってみなさんありますか。意識はあるのに体が動かない、そんなもどかしさに似た心と体のギャップの感じ。まるで幽体離脱し少し離れたところから自分を見ているかのような感じでもありました。
  せっかく練習で克服できたと思われた箇所は当たり前のように間違えます。間違えたことがない箇所もいっぱい間違えます。普段よく間違えるところは必ず間違えます。家を出る直前に2ミスで安堵したのに、もう数え切れないほどのミスタッチと指のもつれ。でも間違えても絶対止まらず、進みました。終盤にきてようやく震えが落ち着いてきたようで、自分を取り戻せるような感じになりました。
 最後に重音で速くなる部分、続くトリルからエンディングまではなんとかこなせたのだろうか。これは本当にもう反省点だらけだな、と感じながら退場すると舞台裏では先生、きっと先生の母、たぶん先生の妹さん3人の拍手のお迎え。「素晴らしい演奏」と褒めていただいたのは嬉しいが「いえいえ、もう思い通りには全くいかなかった演奏でお恥ずかしい限り」と恐縮するばかりでした。いくら練習でうまく弾けても、本番は別物と痛感した次第です。
 発表会直後に先生がブログで書かれていた言葉が沁みました。全く同感です。

 ”本番には魔物が住んでいる” なんて言われる事もあるのですが、 先日の発表会でもそう感じた方はいらっしゃるのではないでしょうか。 〜いつもと違う状況、それには当然いつもと違う感情が芽生え、 いつもとは違う精神状態になります。 その中でも演奏しなければならない厳しさ。 (先生のブログより)

 半年がかりの苦難の先生選びから、発表会出演。これは本当に貴重な体験でした。心は次の発表会に、と行きたいところですが、しばらく基本をじっくり練りたいです。そういうわけで、てんやわんやのピアノ再開でしたが、2016年も終わるころ、ようやく腰をすえて本格的なピアノレッスン開始となりました。ハノン、ツェルニー40番、別れのエチュード、普通にピアノレッスンです。すぐに年も明け順風満帆です。
 と思われたピアノライフ。いつも思わせぶりの終わり方で申し訳ありませんが、今度は思いもよらぬとんでもないアクシデントに見舞われることになりました。
 次回(鬼が来た)に続く。

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2 件のコメント:

  1. 読んでいて、自分の26年ぶりの発表会の事を鮮明に思い出しました。
    子供の頃は本番で緊張なんてした事無かったので、舞台上で手足が震えるなんて想像もしてなくて余裕で居たのですが^_^;
    はい、私にも魔物が降りて来て暗譜が見事にぶっ飛びました。
    何度も弾き直し、震える足はペダル踏んだまま上げられなくなり……もう散々でした(ーー;)
    これでは駄目だと思い、その後はサークルに入ったりして人前演奏の場を増やして、今はそれなりに緊張はしても手足が震えたりって事は無くなりました。
    歳のせいか暗譜はちょいちょい飛びますが(笑)
    にしても子供ってなんで緊張しないのかしら。
    子供の頃の自分に聞いてみたいです。

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    1. koyuさん、コメントありがとうございます。なるほど、サークルなどで演奏機会を増やすのはいい考えですね。自分も検討してみます。
      それに確かにおとなの方が緊張するようですね。雑念が多いからでしょうか。無垢な気持ちになりたいですね。

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